モモツキ桃源郷

「mixi2」と名づける勇気は俺にはない #mixi2

「mixi2」と名づける勇気は俺にはない #mixi2

――あなたは、「mixi2」と名づけられますか?

こんにちは。インターネットの評論系同人サークル「モモツキ桃源郷」代表のももつきゆきやです。弊サークルでは、これまでWebサービスやネット文化に関する同人誌を刊行してきました。半年ほど前にサークルのWebサイトが新しくなってから、ブログを投稿できるようになりました。今後はインターネットや同人文化など、いろいろな気になったあれこれに関するコラムを「よみもの」として投稿していきます。同人誌だけでなくネット上の文字媒体でも活動していきますので、モモツキ桃源郷の今後にご期待ください。

さて、なんといってもmixi2の話題です。我々インターネット・オタクはこのような“Twitter2”が出てくる度にすぐ飛びついてきたわけですが、現在のところの率直な感想としては、良く作り込まれ、よそのSNSを非常に研究して作られているサービスだという印象です。

今回言及するのは、そのネーミングです。(TL;DR: この記事で言いたい事は全てこちらの方が簡潔にポストされています)

「mixi2」と名づける勇気

「mixi」をやってた会社が、新たに始めるSNSの名前、「mixi2」……。多くの方が「安直すぎやしないか!?」という感想を抱いたことと思います。サービス名は、プロダクトがユーザーとコミュニケーションをするための最も重要な要素です。普通は、新たなプロダクトを世に出す時には、開発における思いや期待したい世界観を込めたかっこいい名前をつけたくなるものです。

しかし、「Mastodon」「Misskey」「Threads」「Bluesky」などカッコいい名前のついた数多のTwitter2たちは、今のところTwitterを代替する存在にはなっていません。おそらくは、これが覇権を取るという実感が湧かなかったのだろうと思います。一方で、mixiというかつて一世を風靡した実績のあるコミュニティサイトならば、再び「やってくれる」のかもしれない。「mixi2」という名前は、かつての伝説の後継であることを期待させ、“今度は信じて乗っかって良いんだな?”という信頼感を上手に演出することに成功したのだろうと思います。

あとは、Twitter2とかなんとかいってふざけていたところに「mixi2」とかいう最高に頭の悪い名前が降ってくる、純粋な破壊力が最高。普通もっとこう、あるじゃん。「mixi plus」とか「ネオmixi」とか「mixi super」とかなんでもいいけど。なんかこう、あるじゃん。

「PayPay」と名づける勇気

ネーミングセンスに驚かされたことが、過去にもありました。決済アプリ「PayPay」です。空前のQRコード決済ブームの中、各社は「Origami Pay」「LINE Pay」「楽天ペイ」など様々なサービスを乱立させました。一方で、乱立したままではユーザー体験が良くありません。独占・寡占も良いことではありませんが、最も多くの加盟店を得たサービスこそが「使い勝手の良い決済手段」であり、最も多くのシェアを得たサービスこそが「使い勝手の良い送金手段」となる以上、どこがデファクト・スタンダードとなるかには誰もが注目しました。

そんな中登場したのが「PayPay」です。払う+払う、究極にシンプルで、ちょっと頭悪いような感じもするけど、老若男女誰でも覚えられる名前。これはいつか覇権を取るかもしれないと、すぐに直感しました。

ほとんどの他社が、それぞれの既存サービスやブランドの名前を冠してリリースする中、PayPayだってYahoo! JAPANとソフトバンクの決済サービスなのに、あえて既存のブランドを持ち込みませんでした。SoftBank PayやYahoo! Payになっていた世界線だって全然あっただろうとは思うのですが、そうしなかった。決済サービスは全ての国民の日常に溶け込むプロダクトであるからこそ、既存のブランドによって過度に「色がついてしまう」ことを避け、誰にでも親しまれることを目指したのだろうと思います。

この戦略は、ともすれば危険といえます。色がつかなすぎたら、ただの透明になって埋没してしまうからです。本気で覇権を取りに行くのならばいっそ振り切ってしまえと、「PayPay」と名づける勇気。なんちゃらペイで群雄割拠な中、あえて個性を殺して、決済界の盟主かのような名前を最初から取りに行ったからこそ、PayPayの今の地位があるのだろうと思っています。

君に勇気はあるか

大きなことを行う際、得てして安牌を選んでしまうことがあります。人はついつい、大きな失敗こそないが一攫千金もないような、「置きに行った」選択を取りたくなるものです。しかし、自分のプロダクトに「mixi2」「PayPay」と名づける勇気を持つことも、時には大切なことなのかもしれません。

話を戻して、mixi2。率直に、今まで出てきたどんなTwitter2よりもキてると思います。流石に、これが完全に他のサービスを代替するだろうと心の底から信じるような純粋な感性はもはや僕の中に残っていません。しかし、そういうのを抜きにして純粋に面白いので、しばらく楽しんでみようと思います。

最後に、サークルメンバーのmixi2アカウントへのリンクを貼っておきます。

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